活動の記録

6月16日 杉並区教職員組合・都教組杉並支部が合同で教育委員会に要請!

2005年6月16日
杉並区教育委員会委員長 丸田頼一様
杉並区教育委員会教育長 納冨善朗様
都教組杉並支部執行委員長 前山武雄
杉教組執行委員長 長谷川和男
 
杉並区立中学校教科書採択にあたっての要請
 
1.採択制度について
2001年以前の採択制度では、直接子どもたちの教育に当たる教員が話し合い、学校ごとに採択希望順位をつけ、それをもとに杉並区教育委員会が採択する制度でした。現在の採択制度から見れば、まだ、学校現場などの意見が少しは採用されている実態がありました。

しかし、現行の制度では、学校から杉並区教育委員会に提出する調査書には「これを採用すべき」「採用すべきでない」という具体的な採用に関わる意見は書けず、しかも、その調査書は膨大な文書量で、とても調査委員会のメンバーも最終決定者である教育委員も参考にできるはずもありません。さらに昨年5月には、教科書採択制度を単なる教育委員会の規則の中に位置づけてしまいました。これは、教科書採択の軽視であり、直接子どもたちの教育に携わり、教科書を使用する教員の意見や保護者、区民を採択から閉め出し、教育委員会メンバーの独断でも決定できる制度に、益々変質させてしまったことになります。

教科書は、子どもたちの実態を一番よく把握し、直接それを使ってわかりやすい授業をする教員の意見こそ重視すべきです。それこそが、子どもたちに確かな学力をつけることにつながるのです。約40年前に国際基準として各国が法的な議論の基礎にすべきだと出されたILO/ユネスコ「教員の地位に関する勧告」では、「承認された計画の枠内で、かつ教育当局の援助を受けて、教材の選択および採用、教科書の選択ならびに教育方法の適用について、不可欠の役割を与えられるべきである」と謳われています。また、主権者であり、教科書を使用する子どもたちの保護者や区民の良識にも、教育委員会はしっかりと耳を傾けなければいけません。
2.歴史・公民教科書採択に当たって
また、今、扶桑社版の歴史・公民教科書が問題になっています。4年前もたいへんな問題になり、多くの区民や教職員の反対の声が高まり、扶桑社版歴史教科書採択については、最終的には教育委員会の良識的な判断で不採用になった経過があります。

今回、不当にも検定を通った扶桑社版教科書は、神話的な内容を重視して歴史科学の積み重ねを軽視したり、アジア諸国への侵略の事実を歪めて近隣諸国との友好信頼関係を壊すことにつながる記述があったり、また、明治憲法や教育勅語を賛美したり、基本的人権など憲法の理念を壊したりするような内容になっています。確かに歴史解釈や憲法に対する考えはいろいろで、それを表現する自由はありますが、それを公教育の場である公立中学校の子どもたちの教科書として採用することには、大きな問題があると言わざるを得ません。

私たちは、子どもたちに、歴史的事実や社会的事象に目を向け、これからの社会をよりよく変えていくことのできる力をつけさせたい、そして、平和で一人ひとりが大事にされる世界、殺戮と貧困と差別のない世界を、国内はもちろん、アジア諸国民や地球規模での共同の取り組みで実現していく主権者を育てていきたいと考えています。扶桑社版教科書を採用すれば、そうした未来への希望が失われることは必至です。それは、多くの教員だけでなく、たくさんの保護者や区民が心配していることです。

以上のことから、次のような要請を行います。ぜひとも、杉並区教育委員会で検討していただき、未来をつくる子どもたちのことを十分考え、良識ある判断と施策をお願いいたします。
1.教科書採択にあたっては、日々、子どもたちとともに授業をつくり、子どもたちの実態や確かな学力をつけさせる努力と工夫を行っている教育の専門家である現場の教員の意見を十分反映させること。そのために、学校票の復活など、必要な具体的措置を講ずること。
2.主権者であり子どもの保護者である父母や区民が、教科書に触れ、意見を出せ、それを反映させるような採択過程にすること。
3.採択にかかわる経過や議論、結果を区民にオープンにすること。
4.扶桑社版歴史・公民教科書は、絶対に採択しないこと。