活動の記録

5月28日 杉並・瑞草区民シンポジウム


当日プログラムより 実行委員長挨拶 2005年5月28日
「日本人である前に、一人の人間として」 実行委員長 大門 哲


本日はこのシンポジウムにご参加くださりありがとうございます。
小泉さんが総理になって改革という曖昧なイデオロギーで、日本中が妙にいきり立つようになってから、日本と韓国、日本と中国という私たちにとって一番身近で大切な関係がぎくしゃくしています。歴史認識や領土といった難しい問題については、自分の意見だけを声高に繰り返すだけでは、問題解決の糸口さえ見つけることは困難でしょう。しかしこの国では一国の総理が相変わらずそれを繰り返しています。問題は、総理にこの問題を解決しようとする意欲と、謙虚さが足りないということだと思います。しかし黙ってこれを見ているだけでは、事態は一向によくならないでしょう。
わたしたちにも、少しはできることがあるように思います。先日の新聞に中山文科大臣が学校を訪問し、生徒の質問に答えて、“中国は自分たちだけ国連常任理事国でいたいのに、隣の日本が入ってくると嫌だとかいろいろな思いがあったのでは…”と日頃の持論を述べたと伝えていました。子どもたちに“中国は意地悪な嫌な国ですね…”といわんばかりのこんな話は、対立と不信をあおるだけです。
しかし、私たちはこれ以上対立を深めないことは、可能であると考えます。同じ日の新聞に王瑞雲さんという中国ご出身の小児科のお医者さんが、母国中国の反日デモに関して“愛国無罪”を叫ぶ同胞の姿は悲しかったとのべています。愛国無罪ということで、人間として許されない暴力や厚顔が許されてしまえば、もはやそれは本当の意味での愛国ではありません。人は人としてそれでよいか…という根元的な問いかけを、最後まで持ちつづけなければなりません。この問いかけの前で私たちは、国境を越えて共通の基盤に立つことが出来ます。
私は最近長いこと忘れていた嫌な言葉を思い出させられました。加藤周一さんが朝日新聞の〈夕陽妄語〉というコラムで、敗色濃厚ななか、招集で出征する学生を送った宴の席の思い出を次のように語っていました。見送る学生が、戦場に向かう学生に対して突然大声で“それでもおまえは日本人か…”と叫び、それに対して、将来を期待されながら、明日戦場に向かうその学生は静かに“俺は人間だ…”と答えたという出来事です。当時はそんなことがよくありました。私自身もそんな情景を見たように思います。しかしどちらの問いかけがより本質的であるか見誤ってはなりません。日本人としてか…、人間としてか…。
私たちは日本人であり、韓国人ですが、人間としては共通の基盤を持つことができます。これ以上対立を深めないために今できることは、人間として誠実に語り合うことではないでしょうか…。そのことを通じて人類が歴史とともに求め続けいまだに確かな形で手にしていない、平和のための道筋と哲学を見つけることができるかも知れません。この会は最初の小さな一歩ですが、瑞草と杉並の友好と信頼のための確かな一歩となるよう皆さまのお力をお貸しください。今回にご参加くださった皆さまに敬意を表しご挨拶といたします。


初の試み「杉並区&ソチョ区(ソウル市)」合同区民シンポジム 今こそ対話を!共通の歴史認識を求めて
小島政男(杉並の教育を考えるみんなの会)


4年前より厳しい今年
友好関係14年のソウル市ソチョ区からゲストを招いて「シンポジウムを開催しよう!」の案が浮上したのが昨年の秋頃でした。でも誰しもみな不安でした。ホントに出来るの? また外圧って言われない? アメリカの声を聞くことは国際協調でも、アジアの友人の声を聞くことは、外圧とは! ましてや足を踏んだ相手ではないか、その態度を改めようと歴史を学ぶのに、当の相手の声を聞くのに何をはばかることがあろう、そうだ! 絶対成功させよう、と意を決して運べば、意外や意外、トントン拍子。 ソチョ区長さんからは「私が杉並に行きましょう」との快諾を得ることができ、教師、市民の韓国側ゲストについては、ソウルの教科書運動本部(アジアの平和と歴史教科書連帯)の強力なバックアップを得、学生ゲストは韓日学生フォーラムから派遣してもらえることになり、後は実現に向けて準備に邁進、という時に事件はおきました。
“慌てふためいた山田区長、なりふりかまわずの嫌がらせ”
さて、もう一人のゲスト。杉並の山田区長に4月半ば、シンポジストとしての参加を要請しました。この時はじめて事態の進行に気づいた彼は、私たちに「不参加」の返答をする一方で、ソチョ区には「来るな」コールを度々かけ執拗な嫌がらせを始めたのです。 「シンポを開こうとしている奴らは、アカで過激派だ」、「政治的な大問題になる」などなど。ソチョ区長は、一時この訪日に難色を示すようになりました。 実行委員3人で再度訪韓し、日本の状況、杉並の状況などを話し、私たちの想いを必死に訴えました。その結果、ソチョ区長、副区長、ソチョ区選出のイ・ヘフン国会議員のシンポジウム参加が決まったのです。
「今こそ対話を!」感動のシンポジウム
>当日は、多くの参加者であふれ、熱気と真剣さに満ちたシンポジウムとなりました。 韓国からのゲストは、それぞれに具体的な体験をとおして、歴史の真実を子どもたちに伝えていくことの大切さを語り、そして私たちは、アジアの平和のために回を重ねていくことを誓いあいました。 イ・ヘフン国会議員は、正式な外交ルートである韓国大使館を通して、杉並区に面談を申し入れましたが、それすら山田区長は拒絶したのです。この独善性と非国際性は「つくる会」教科書そのものです。 私たちは「つくる会」教科書採択阻止に向けて、このシンポジウムの成功を大きく発展させたいと考えています。6月末には、記録集も出ます。ぜひご一読を!

[新聞記事]

日韓歴史教育シンポ:友好区庁長の出席に、杉並区長が「遺憾」 /東京

日韓の歴史教育を考えようと市民グループが28日、杉並区で開いたシンポジウムに、同区の友好自治体・韓国ソウル市瑞草(ソッチョ)区の趙南浩区庁長が出席し、杉並区の山田宏区長は同日、コメントで遺憾の意を表明した。
山田区長は、シンポが「さまざまな論議がある教科書問題に一定の政治的主張を行う目的」として、友好自治体の長が参加したことを「多くの区民からみても、両区の友好交流からみても、必ずしも生産的なものとは受けとめられず、遺憾」と表明した。
区は趙区庁長の来日、シンポ参加について正式な連絡は受けていないとしており、週明けにも瑞草区に同様の意を伝える方針。【高島博之】
毎日新聞 2005年5月29日(日)

歴史学び未来を築く 東京・杉並 日韓の市民がシンポ

東京・杉並区で二十八日、「共通の歴史認識を求めて」をテーマに日韓の「区民シンポジウム」が開かれ、同区と友好都市の提携をしている 韓国ソウル市の瑞草(ソチョ)区の区長や国会議員が「歴史の事実を伝えてほしい」と訴えました。
元杉並区教育委員の大門哲さんを実行委員長に幅広い区民でつくる「杉並・瑞草区民シンポジウム実行委員会」が主催。
在日韓国人も含め二百三十人が参加しました。
瑞草区選出の国会議員・李恵薫(イ・ヘフン)さんは「日韓両国の人々は戦争で人権をじゅうりんされ、命を奪われた。間違いを繰り返さないためには、何が間違っていたかを伝えていかなければならない」とのべ、侵略を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書を批判しました。
趙南浩(チョ・ナモ)瑞草区長は日本の植民地時代だった小学生のとき学校で朝鮮語を使ったとき教師に激しく怒られた体験などを語り、「認識に違いがあっても歴史の事実をありのままに記し、後生につたえることは私たちの義務」とのべました。
君島和彦東京学芸大教授をコーディネーターに日韓両国の教師、保護者、青年たちが討論。「韓国にいって日本の侵略の実態を知るとともに『これからどういう未来を築くか一緒に考えていきましょう』といわれ感動した。
対話すれば理解し合えると確信した」(平和運動をしている日本の青年)と語り合いました。
実行委員会では杉並区の山田宏区長にも参加を要請しましたが、区長は理由を明らかにしないまま断りました。
李議員や趙区長が面談を申し入れたにもかかわらず、会おうとしませんでした。
この点について趙区長はあいさつのなかで「(歴史教科書問題で)接触を求めたが、成果がなかった」と語りました。
新聞赤旗5月29日(日)

杉並 市民の歴史シンポ 区の電話で混乱

中学校の教科書採択を前に、杉並区の歴史教育を考える市民グループが同区と友好都市関係にある韓国・ソウル市瑞草(ソッチョ)区の区長を招いてシンポジウムを開く。
当初、瑞草区側は区長の出席を快諾していたが、直前になって「難しくなった」と伝えた。最終的には予定通り出席することにしたものの、主催者をやきもきさせた。事の発端は、杉並区の区長室長と瑞草区の電話のやりとりだった。
シンポは杉並区民らの実行委員会が企画。28日に「共通の歴史認識を求めて」をテーマにして開く。瑞草区の教員や市民に加え、趙南浩チョナムホ・同区長にも出席を求めた。
実行委によると、3月にメンバーが訪韓した際に瑞草区を訪れて趙区長に出席を要請し、快諾を得た。ところが今月7日に再訪すると、朴成重パクソンジュン副区長から「区長の出席は難しくなった」と伝えられた。
理由は杉並区側からの電話だったという。朴副区長は朝日新聞社の取材に対し、杉並区の高和弘・区長室長から電話があったことを認め、「シンポの内容は政治的な問題」などと言われ、思いとどまるよう要請された、と説明した。
このため瑞草区はいったん出席を見合わせる方針を決めた。その後、両国の市民グループから要請を受け、23日になって趙区長の出席を決断したという。
一方、杉並区の高区長室長は「朴副区長には、杉並の山田宏区長は日程の都合で出席できないと伝えただけだ。それ以外は両区の信頼関係から言えない」としている。
実行委員長を務める元杉並区教育委員の大門哲さん(73)は「瑞草区が信義を貫き、最初の約束を守ってくれたことに大変感謝している。長い目で友好を深めたい」と話している。
瑞草区はソウル市の区の一つで、中心部から車で約30分、人口約40万人。
杉並区とよく似た住宅地域であることから91年に友好都市となった。
杉並区では4年前の教科書採択で、従来の歴史教科書を「自虐的」と批判する「新しい歴史教科書をつくる会」の主導で編集された歴史教科書を複数の教育委員が推した経緯がある。
シンポは28日午後1時10分から杉並産業商工会館で。
瑞草区選出の韓国国会議員も出席の予定。29日にも別の会場で討論交流会が開かれる。
朝日新聞5月25日(水)

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