杉並区の情報開示問題の実態

★ある杉並区民の方かからの報告です。
杉並区の情報開示問題の深刻な実情です。

杉並区の情報公開の公正さを疑わせる事案を体験しています。
 2年前、常識的に考えて「作成していない」ことは考えられない文書を「作成していないから非公開」とされました。
これに納得できず不服審査請求をしましたが、審査会に書類が送られたのが今年の1月末です。
遅れた原因は、2年前と同じ1行の非開示理由を書いた「弁明書」を作成するのに処分庁(非開示処分を行った部署)が1年9カ月をかけた、ということです。
作成していないことはありえない文書を、「作成していないから非公開」とすることは情報公開制度の根幹を揺るがすことです。また、審査に必要な文書の提出を処分庁が遅らせることで、情報開示請求の意味を失わせるような審査の遅滞が起きています。
 情報公開制度を骨抜きにするこのような事例を皆様に知っていただきたく、報告します。

(1)なぜ「作成していないことはありえない」のか。

① 公開請求した文書、経緯
 2019年秋に、私は障害者施策課から「同年8月15日に、校長・教育担当部署から高円寺小中一貫校特別支援学級教室配置についてのヒアリングを行った」ということを聞き、「9月5日会議説明用(障害者施策課)◆校長及び教育担当部署からのヒアリング内容」(以下、「9月5日文書」と記す)というA4一枚の文書をもらいました。この文書は、同課主催の区民有識者会議(「障害者差別解消支援地域会議」)にヒアリングの説明のために出されたものです。私は、この文書の元になったヒアリング記録を見せてほしいと言いましたが、「それは見せられない」と言われました。
そこで2019年11月29日に、9月5日文書の元になったヒアリング記録を情報公開請求しました。

② 「可否決定通知書」(2019年12月13日付)は「非公開」、その理由は以下です。
「実施機関は作成又は取得していないため、当該情報は存在せず、公開することはできません。」

③ 「作成していない」ことはありえない。 
常識的に考えて、会議説明用と銘打ってA4一枚の簡単なヒアリング報告書を作成しておきながら、その元になったヒアリング記録を作成していない、などということがあるでしょうか。A4一枚の「会議説明用」の文章は何を元にして作ったのでしょうか。

④もし本当に「ヒアリングの記録を作成していなかった」としたら・・・障害者施策課は職務不履行で責任を問われるのではないでしょうか。
「ヒアリングの記録を作成していない」とすれば、ヒアリングの記録は「9月5日文書」だけになります。この「9月5日文書」は「唯一の記録」になり得る内容かどうかを見ていきます。
この文書には「ヒアリング開催の日時」「聴き取り対象者の氏名」「聞き取りを行った障害者施策課職員の氏名」「複数の聴き取り対象者それぞれの具体的な発言内容」等具体的なことは何も書かれていません。
もしこれがヒアリングについての唯一の記録だとすれば、ヒアリングを行ったことの確認ができません。これは課として責任を問われることではないでしょうか。
➄ 見せたくない文書を「作成していないから公開できない」とするようなことがあれば、情報公開制度の根幹をゆるがすことです。

(2)非公開処分を行った処分庁(障害者施策課)が審査会に出す「弁明書」の提出遅滞について

私は2020年3月6日に非公開処分を不服として審査請求をしました。
これに対して処分庁からの「弁明書」(2021年12月9日付)が12月21日付けで送られて来ました。
処分庁が弁明書を作成したのは審査請求の1年9か月後です。
弁明書に書かれている「処分庁の意見」は
「審査請求人から取り消しを求められている本件処分の理由に関しては、上記可否決定通知書に付記したとおりであり、特に追加するものはないので、上記弁明の趣旨の通りの採決を求める」
です。「可否決定通知書に書いたとおりで追加するものはない」という内容の弁明書を処分庁が作成するのに1年9カ月もかかったとは!
処分庁が弁明書の作成を遅らせば審査会への諮問も遅れます。
私が情報公開請求をした情報は高円寺小中一貫校に関するもので、同校は2020年6月に開校しました。審査の遅れは情報公開の意味を失わせるものです。

 もっとも、これでも短くなったのかもしれません。
堀部やすし杉並区議会議員のブログによれば、堀部議員の場合は審査会に諮問するまで3年近くかかったとあります。
またジャーナリスト三宅勝久氏は、審査請求後4年経っても音沙汰がなく放置されたため裁判に訴えました。
昨年11月に1審で 「社会通念に照らして不当とされるべきものであることは明らか」ではあるが、「国家賠償法上違法とするにはなお足らない」という判決が出て現在控訴中とのことです(控訴審第1回口頭弁論は、3月23日2時から東京高裁822号法廷)。このように「社会通念に照らして不当」という判決文があったために、私の場合は1年10カ月で審査会への諮問となったのではないかと思います。
 それにしても、あるはずの文書を「作成していない」と言い、不服審査請求をすれば簡単な弁明書提出に1年9カ月もかける、ということは、あまりにも区民を馬鹿にしていることです。

 1月末締め切りで「杉並区議会基本条例」のパブリックコメントがありました。そこには「議会は執行機関に対し監視や評価を行っている」とありました。情報公開の推進をうたっている杉並区議会基本条例です。情報公開を骨抜きにするこのようなことに対し監視や評価を行ってほしいと思い、パブリックコメントにこのことを書きました。

以上が報告です。