歴史教科書・訂正申請に関する資料 2021.09.09
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「従軍慰安婦」等の教科書記述の訂正申請について
髙嶋伸欣
検定に合格した教科書の記述を訂正申請するのは、あくまでも発行者・執筆者の自主的な判断によるものでなければならない。政治的思惑で左右することは許されない。今回は安倍政権が設けた「閣議決定などによる政府の統一的な見解に基づいた記述がされていること」(要旨)との検定基準(2014年改悪)による、予想された通りの悪しき運用例となった。特に歴史的事実の評価は学術的に議論を重ねてされるべきものであるのに、そうした検討がされた様子がまるでない。
閣議と国会という政治そのものの場で教科書記述の適不適が論じられ、その政治的判断に基づく訂正申請を、発行者・執筆者に事実上強制した。政治の介入を食い止めるどころか、その先兵となった文科省と萩生田大臣の責任は重い。
今回の特色は、「従軍慰安婦」や「強制連行」など朝鮮半島がらみの事項に限定されているところにある。中国人の「強制連行」の記述は問題にされていない。背景には東アジア、特に朝鮮半島との緊張緩和を望まない政治的思惑が読みとれる。
そうした思いの勢力が、当該の教科書発行者に執拗に圧力をかけたという情報もある。検定と訂正申請処理は密室でされ、発行者たちは分断・孤立状態に置かれている。そうした状況を社会が変え、当事者を支える態勢を構築する必要性を、今回の事態が示している。