資料室<2005年「つくる会」歴史教科書採択に対する抗議文・ 要請文>

杉並区教育委員会による「つくる会」歴史教科書の採択に抗議する

杉並区教育委員会は、本日、2006年4月から使用する杉並区立中学校の歴史教科書に、「新しい歴史教科書をつくる会」(以下「つくる会」と略)が作成した扶桑社の教科書を採択することを決定した。

杉並区教育委員会は、8月4日の審議で、他の教科についてはすべて採択を決定したにもかかわらず、社会科のみ異例の審議続行とした。

その後、「つくる会」は、上記審議における教育委員の発言をとらえて公開質問状を出すなど、教育委員会における自由な審議を威圧により妨害する行為を行った。このような「つくる会」の行為は、民主主義をふみにじるものであり断じて許すことができない。

杉並区教育委員会は、このような圧力に屈することなく、多くの市民から「つくる会」教科書を採択すべきではないという要請を真摯に受け止めて教科書採択を 決定すべきところ、東京都下の市区町村採択区においては、54のうちすでに37の採択区が不採択にしている「つくる会」歴史教科書を採択してしまった。

「つくる会」歴史教科書は、日清・日露の戦争以降の日本の戦争を、日本の防衛戦争・アジアを解放するための戦争などと美化して、歴史を歪曲し、アジア諸国 に対する侵略戦争とする立場を「自虐史観」と批判する。これに対しては、国内外から厳しい批判が寄せられており、歴史教科書としてふさわしくないことは明 らかである。

このような教科書を採択することは、人権と民主主義の担い手となる子どもたちの成長を考えて教科書を採択すべき教育委員会の責任を放棄し、アジア諸国との友好をも阻害する暴挙にほかならない。

自由法曹団は、杉並区教育委員会に対して厳重に抗議するとともに、速やかに「つくる会」歴史教科書の採択決定を撤回し、学校現場、保護者、都民、教育関係者の意見に基づき教科書を採択し直すことを求めるものである。
2005年8月12日
自由法曹団
団 長  坂 本   修

自由法曹団東京支部
                       支部長  松 井 繁 明