資料室<2005年「つくる会」歴史教科書採択に対する抗議文・ 要請文>

杉並区教育委員会が扶桑社版「つくる会」歴史教科書を採択したことに、心の底から強く抗議します!

 本日、杉並区教育委員会は8月4日から継続した採択会議の中で、全国で二番目、東京の採択地区ではじめて「つくる会」歴史教科書を採択しました。
学ぶ子どもたち、教える教員、多くの区民の声を無視して、政治的圧力に屈した杉並区教育委員会の一部教育委員及び教育長の責任は重大です。
この間私たちは、多くの区民に駅頭で、地域で訴え続けてきました。たくさんの区民が図書館・教育センターに教科書の閲覧に行きました。区民意見は圧倒的に「つくる会」教科書不支持でした。
教員も意見を書きました。調査報告書でも「つくる会」教科書は不支持でした。しかし教員には調査報告書を書き直しさせてまで、あの教科書を正当だと捻じ曲げようとしました。その上、一教育委員の、委員会での自由であるべき発言に対して、「つくる会」副会長である著者らが圧力を加えるという前代未聞のことまで起きました。この異常さはなんでしょう。採択日を伸ばしたことを含め、政治的に仕組まれた採択だといわざるを得ません。
今回の教育委員会ほど、教育の主人公である子ども不在だったことがあったでしょうか。
教育長は、杉並区の教育行政の責任者としてあるまじき発言をしました。「これからも戦争はなくならないし、その前提に立っている扶桑社版がいい」と。
教育委員および教育長は、平和的国家の形成者として21世紀に育ち行く子どもたちに何を呼びかけるべきだったのでしょう。
今、世界はとても困難な中にあっても、ヨーロッパでも、中南米でも、アジアでも、一国主義ではない、連なりと枠組みのもと、平和に向かうという国際世論が大きくなっています。
21世紀に生きる子どもたちに、平和への道筋を熱く語る教員がいて、そういう「教科書」で学ぶ子どもたちとの信頼に満ちた学びの場こそ必要です。学ぶとは「感動を心に刻むこと」、教えるとは「誠実を語ること」です。本日の教育委員会での一部教育委員、教育長の発言は、教育という場にもっともふさわしくないものの繰り返しでした。ソウルから友情を深めて中・高生が帰国する今日・その日に、延期した採択をおこなったということは、意図的であったとしか考えられません。今日まで築いてきた韓国やアジアの人々との友好を大きく踏みにじるものであり、世界世論の方向に対する挑戦でもあります。

平和都市宣言をし、原水爆禁止運動発祥の地・杉並で、もっともふさわしくない教科書を採択したことに、私たちは断固抗議します。

私たちは、子どもたちを戦争に導く教育を断固拒否します。

私たちは、「つくる会」歴史教科書採択を白紙撤回させるまで運動を広げ、強めます。
2005年8月12日
杉並の教育を考えるみんなの会