資料室<2005年「つくる会」歴史教科書採択に対する抗議文・ 要請文>

扶桑社版歴史教科書採択に対する抗議と撤回要求

2005年8月13日
杉並区 教育委員会御中
9条の会・杉並
有村一巳
1. 杉並区 教育委員会は昨12日の臨時会で、「新しい歴史教科書をつくる会」が主導する扶桑社版歴史教科書を採択するという決定をしました。 私たちは、3つの理由、すなわち、
@その内容が正確性に欠けていること、
A 杉並区 の基本方針に反していること、
B議論の場が不十分であり、日々教育現場で教え、子どもたちに学んでいる教師の意見を最大限尊重すべきであることなどをあ げ、扶桑社版歴史教科書の採択をしないよう強く要請し、「杉並の教育を考えるみんなの会」などと一緒に活動してきました。
2.今回の採択には、行政の事実上の強い介入がありました。
山田区長は、成人式で特攻隊員の遺書を引用したり、区議会で太平洋戦争を「大東亜戦争」と呼称したり、「つくる会」幹部が賛同者に名を連ねる CS 放送局「日本文化チャンネル桜」で月1回の番組を担当したりなど、「つくる会」への支持を鮮明にしてきました。扶桑社版教科書を採択させるために政治的に介入したものと非難される所以であります。
3.杉並は原水爆禁止運動発祥の地として知られ、「いま、私たちの手にある平和ゆえの幸せを次の世代に伝えよう」との平和都市宣言をしています。国際親善を重視し、韓国ソウル市ソチョ区やオーストラリアのウイロビー市と友好都市としての提携を発展させてきました。

「平和都市・杉並」「世界と共存する理性と知性のまち杉並」で、歴史を歪曲し侵略戦争を賛美する扶桑社版歴史教科書が使われることは、子どもたちに歪んだ教育を押し付け、国際的な信頼を失うことになります。

4.私たちは、以上のような状況のなかで行われた今回の教科書選定に強い疑念を持つと同時に、極度に偏った政治的主張に貫かれた扶桑社版歴史教科書を子ど もたちの手に渡すにしのびません。今回の採択を白紙に戻し、区民や教師の声を聞いて、歴史教科書の選定をやり直されるよう強く要請します。