資料室<2005年「つくる会」歴史教科書採択に対する抗議文・ 要請文>

扶桑社版歴史教科書採択の白紙撤回を求めます

8月12日、貴杉並区教育委員会は、来年度から使用する中学校歴史教科書に、内外から批判を浴びている「新しい歴史教科書をつくる会」編集の扶桑社版を採択した。

私たちは、貴教育委員会の決定に強く抗議し、白紙撤回を求めます。

今回、内外の多くの反対の声を無視して採択を強行した「つくる会」歴史教科書は、かつて日本が行った植民地支配と侵略戦争を反省するどころか、それを全面的に肯定する教科書である。またアジアの人々を蔑視し、自民族中心主義=日本人中心主義と偏狭な国家主義で書かれた教科書である。「つくる会」の教科書は、2000万人を超えるアジアの人々、300万人を超える日本人を死に至らしめたアジア太平洋戦争の厳しい反省に立って作られた憲法9条を否定し、日本を再び「戦争のできる国」にするために作られた教科書である。

何点か具体例をあげれば、次の通りである。

@1910年の韓国併合について、「日本の安全と満州の権益を防衛するために」必要だったと植民地支配を正当化する記述をしている。他方、36年間の植民地支配でどれだけの苦しみを与えたかという点についてはほとんど書かれていない。

A1931年から始まる15年戦争については、“中国の排日運動”から記述をはじめ、中国側に責任があると言わんばかりの書き方をしている。

Bまた、“大東亜戦争”という“日本がアジアを解放するための戦争”という戦争肯定の用語を使用している。

このような教科書に対し、4年前に扶桑社版が登場していらい、国内外から批判の声があがったことは、当然のことである。

日本の学校には、植民地支配の結果、日本に住むことを余儀なくされた在日朝鮮人・在日中国人はじめ外国人も学んでいる。こうした中で、自民族中心主義=日本人中心主義と偏狭な国家主義に貫かれた教科書が、学校現場で使用されることになれば、子どもたちの教育と将来にとって有害であるのみならず、アジア諸国と日本の未来に深刻な問題を引き起こすことになる。国際社会の一員として世界の人々とともに生きる子どもたちに決して手渡してはならない教科書である。

杉並区で扶桑社版「つくる会」教科書が採択されたことは、これまで日本国内外の多くの人々が築いてきたアジア諸国との平和友好の絆を踏みにじる行為であり、アジアの平和を脅かす重大な挑戦であると言わざるをえない。

私たちは、このように重大な問題を持つ「つくる会」の歴史教科書を、直ちに白紙撤回するよう、強く求めます。

2005年8月23日
教育基本法の改悪をとめよう! 岐阜連絡会
連絡先 〈住所削除〉 村瀬方