資料室<2005年「つくる会」歴史教科書採択に対する抗議文・ 要請文>

執行委員会声明

2005年8月12日
杉並区教育委員会 丸田委員長様
同   納冨教育長様
憲法・教育基本法の精神、世界平和とアジア諸国民との友好に逆行する
「つくる会」教科書採択に断固抗議し、その撤回を求める要請書
東京都教職員組合杉並支部執行委員長 前山武雄
 本日8月12日、杉並教育委員会は臨時会議を開き、継続審議となっていた来春から使用する中学校社会の教科書について、歴史的分野の教科書を「扶桑社」(以下「つくる会」教科書)と決定しました。
私たちはこの決定に断固抗議し、その撤回、審議のやり直しを強く要求します。

かねてから私たちが問題にしてきたように、この「つくる会」教科書は、過去の戦争についてアジアの国々を侵略し、植民地化したことを全く反省していません。また、国民の戦争協力のことは取り上げても、悲惨な戦争の実態は取り上げていません。原爆の悲惨な犠牲についても全く触れていないのです。最後には「よく戦った。」と結んでさえいるのです。

このように、憲法、教育基本法の精神をもっとも踏みにじる教科書が「つくる会」の教科書であり、私たちが「戦争賛美の教科書」と指摘したのは当然ですし、「つくる会」教科書の検定合格に対してアジアの国々から批判が巻き起こっているのは、教育委員会も承知のはずです。

杉並が韓国ソチョ区と友好姉妹都市になり、交流を深めてきたという経過や、杉並は空襲を何回も受けたこと、原水禁運動発祥の地という歴史から見ても「つくる会」の教科書は杉並の子どもたちには全くふさわしくない教科書なのです。にもかかわらず、本日、杉並区 教育委員会はこの「つくる会」教科書の採択を強行しました。

この結論を導く決定的な鍵を握っていたのは教育長でした。しかし、教育長は「扶桑社版は現実的だ。過去から未来を見ると、戦争はなくならないのではないか」と述べ「つくる会」教科書を擁護しました。しかも、現場教職員の意向を反映した調査委員会の報告については、一切触れませんでした。

学校を代表する教育長です。憲法、教育基本法の精神をしっかり受けとめ、それを教育行政に生かし、子どもたちに伝える立場にあるのは、教育長ではありませんか。世界の平和を願い、「真の友好を築く」ことを訴える教科書は理念型だから、「つくる会」教科書より劣るというのでしょうか。そして、どうして現場教職員の意向を尊重する立場に立てなかったのでしょうか。全くもって遺憾と言わざるを得ませんし、決定の重大さは計り知れないものだと思います。今からでも遅くはありません。もう一度審議をやり直してください。

私たちは、「つくる会」教科書の採択に断固として抗議します。
また、来年度から、この教科書使用に当たって、教職員や学校に対して様々な介入や圧力があるならば、それは決して許されるものではありません。
私たちが批判してきたように、「つくる会」の教科書がねらっている「戦争ができる国」の子どもを育てる教育は、憲法と教育基本法の名において断固として拒否します。

「教え子を再び戦場に送らない」は私たちの決意です。